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2013/12/09(月) 第286回11月23日放送

特選句 

     雲うつし今は静かに流る河               恭子

入選句

題『写す』
     浴室の鏡 モデルを写してる                 葵
     嬉しい日写す鏡がよく笑う                 英樹
     ありのまま写して見せる定年後              翔空
     写されて花は短い命閉じ                  英明
     はいポーズ撮るまで邪心離れない           なごみ
     鏡見て自分の謎を写しかえ                清香

                                                      
題『自由吟』
     深深と秋は深まり本を読む                 めぐ
     夏バテの体調不良老いを知る                寿
     生きたいと思うブランコ海も見る              重子
                              


川柳ヒストリー

     小春日に心も口も軽くなり              繁野

    今回は川柳界をリードしてきた人たちの句ではなく、川柳を愉しみ、川柳
   を糧にして生きる一川柳人の句をご紹介します。
    昭和62年(1987年)創元社出版『新版川柳歳時記/奥田白虎(ビャッコ)
   編集』の中の一句です。
    初冬の肌寒い日の続く中、暖かさを感じる穏やかな日は『心も口も、軽く
   なり』嬉しくてつい、平素は喋らない事などを口にする。という人間の心情を
   詠んだ軽妙な一句です。

    『言うまでもなく、川柳はその中身の人間臭さが真骨頂で、私(白虎)は世
   界一短い文章で、ずばりその心を直截できる川柳のよさを、書籍で世人に
   訴えたかったのであり、「川柳歳時記」の発刊は、一応の成功を納めたもの
   だったと考えている。』(奥田白虎)

    『川柳歳時記』は時候のほかに、天文、地理、生活、行事、動物、植物、
   などの項目があり、最近では、ロマン、ポケットベル、スランプ、リズム、など
   もあるそうです。まだ読んでいない私ですが、図書館で借りて読んでみよう
   かな、と思っています。
 
   
    
         

選者の一句

    遠去かる足音千のドラマ曳き             ヨシヱ


 

    ☆来年1月のお題は『七』              12月末日締切りです。
    ☆来年2月のお題は『匂い』           来年1月末日締切りです。

    ☆なお『自由吟』は随時、募集しています。



   今回の特選句『雲うつし今は静かに流る河』

    『静かに流れている河に、空を流れている白い雲が写っている。』
    穏やかで美しい、一見、俳句のような句に 『今は』 という言葉が入って
   いて、この句の背景や心情、様々な物が見えてくる気がします。
    こんなに穏やかな河が、静かな流れが、ゲリラ豪雨、鉄砲水となって人々
   の命を呑み込んで行ったのだが、『今は』、白い雲を写して何事も無かった
   ような長閑さだ…。そんな、近年の異常気象や災害も句の中に盛り込まれ
   ている気がしました。
    川柳は短い文芸です。『今は』のひと言で『引っ掛り』を生み出し、佳句と
   なるのだなあと、改めて思いました。