▼ 2013/12/09(月) 第286回11月23日放送
■入選句
題『写す』浴室の鏡 モデルを写してる 葵
嬉しい日写す鏡がよく笑う 英樹
ありのまま写して見せる定年後 翔空
写されて花は短い命閉じ 英明
はいポーズ撮るまで邪心離れない なごみ
鏡見て自分の謎を写しかえ 清香
題『自由吟』
深深と秋は深まり本を読む めぐ
夏バテの体調不良老いを知る 寿
生きたいと思うブランコ海も見る 重子
■川柳ヒストリー
小春日に心も口も軽くなり 繁野今回は川柳界をリードしてきた人たちの句ではなく、川柳を愉しみ、川柳
を糧にして生きる一川柳人の句をご紹介します。
昭和62年(1987年)創元社出版『新版川柳歳時記/奥田白虎(ビャッコ)
編集』の中の一句です。
初冬の肌寒い日の続く中、暖かさを感じる穏やかな日は『心も口も、軽く
なり』嬉しくてつい、平素は喋らない事などを口にする。という人間の心情を
詠んだ軽妙な一句です。
『言うまでもなく、川柳はその中身の人間臭さが真骨頂で、私(白虎)は世
界一短い文章で、ずばりその心を直截できる川柳のよさを、書籍で世人に
訴えたかったのであり、「川柳歳時記」の発刊は、一応の成功を納めたもの
だったと考えている。』(奥田白虎)
『川柳歳時記』は時候のほかに、天文、地理、生活、行事、動物、植物、
などの項目があり、最近では、ロマン、ポケットベル、スランプ、リズム、など
もあるそうです。まだ読んでいない私ですが、図書館で借りて読んでみよう
かな、と思っています。
■選者の一句
遠去かる足音千のドラマ曳き ヨシヱ☆来年1月のお題は『七』 12月末日締切りです。
☆来年2月のお題は『匂い』 来年1月末日締切りです。
☆なお『自由吟』は随時、募集しています。
今回の特選句『雲うつし今は静かに流る河』
『静かに流れている河に、空を流れている白い雲が写っている。』
穏やかで美しい、一見、俳句のような句に 『今は』 という言葉が入って
いて、この句の背景や心情、様々な物が見えてくる気がします。
こんなに穏やかな河が、静かな流れが、ゲリラ豪雨、鉄砲水となって人々
の命を呑み込んで行ったのだが、『今は』、白い雲を写して何事も無かった
ような長閑さだ…。そんな、近年の異常気象や災害も句の中に盛り込まれ
ている気がしました。
川柳は短い文芸です。『今は』のひと言で『引っ掛り』を生み出し、佳句と
なるのだなあと、改めて思いました。