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2014年5月の日記

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2014/05/31(土) 第309回5月3日放送

特選句 

     カプセルも企業戦士の部屋である                益弘

入選句

題『部屋』
     子供部屋カベ一面にプロマイド                野薫
     焼き肉も煙草も禁止マイホーム                 葵
     反抗期ドアーのノブが重くなり                なごみ
     バリアフリー段差求めてたたら踏む             としや
     スピーチの練習部屋を閉め切って             かほる
     政治家の笑顔の奥の隠し部屋                英樹
     十畳の団欒場所が犬の部屋                  めぐ
                                       
題『自由吟』
     上擦った見舞いの口を警戒す                 令子
     春ですよ旅の鞄に靴弾む                     栄
                                  

楽々川柳

   『選者の心得』

    私の質問をさせて頂きました。
    最近、句会の選者をする事があり、若輩…と言っても川柳を始めて
   もう八年。逃げられません(^_^;)
    そこで、選者としての心得を伺いました。皆さまも参考になれば、と
   思います。

    まず、選者の責任は主催者側と本人、半々です。

    主催者側は「この人に」と推薦され、役員相談の上、お願いします。
    ですから、選者に選ばれた場合は余程の理由がない限り受けて下
   さい。
    受けたら、一生懸命『選』をする、は、当然ですが、出来れば『好き
   な句』より『良い句』を選びたいものです。といっても、結局『好きな句』
   を選んでいる事になると思いますが、

    ① 有名句に似た句を選ばないようにする
    ② 誤字・脱字の句は選ばないように気を付ける
    ③ 語呂、リズムの良い句を選ぶようにする

    でも、選ぶ基準は本人です。いつも同じような句を選んでいると『あ
   の人はこういう句を好む』と言われたりしますから、やっぱり気を付け
   たいですね!
    披講をする際は、自信を持って(いるフリをして!)作者が呼名し易
   いように、リズムよく、はっきりと読み上げて下さい。

    だそうです…。(うえええ~ん!)
    でも、結局『慣れ』だと思います…。機会があればどんどん場数を踏
   むようにして、ひたすら慣れましょう!!!

    

選者の一句

    不確かな時間旅した君遠く               桔理子


   
    ☆6月のお題は『布団』             5月末日締切りです。
    ☆7月のお題は『運ぶ』             6月末日締切りです。


    ☆なお『自由吟』は随時、募集しています。



  今回の特選句カプセルも企業戦士の部屋である

    『カプセル』とは、私には馴染みの無い『カプセル・ホテル』の事です。
    兄が大学時代、終電に乗り遅れると利用する事がありました。そうか、
   社会人の方の利用が主なのだと、初めて気付きました。
    部屋、というお題で『カプセル・ホテル』。企業戦士とは、本当に大変
   なのだと改めて思い、この句を選ばせていただきました。
    夏牛さんは正に企業戦士だったそうで、懐かしい、と、非常に納得さ
   れていました。

    『企業戦士』という強く、たくましい言葉と『カプセル』という日常。
    ちょっと哀愁も漂って、でも、頑張ってきたお父さん達に感謝の想い
   も湧く一句です。

2014/05/21(水) 第308回4月26日放送

特選句 

     まな板の鯉は鳴き声など出さぬ                英明

入選句

題『鳴く』
     雷鳴を恐がる子らの肩を抱く                かほる
     エサねだる時計がわりのお馴染みさん           恭子
     雷鳴が弱い心を叱りつけ                    英樹
     引き出しを閉めると祖母が笑い出す              葵
     調律を終え鶯は楚々と鳴く                   敏晴
     小鳥たち鳴いて廻って四季を告げ               寿
     ママの腕でせかせかと鳴くレジ袋               重子
                                       
題『自由吟』
     お祝に風が花びら持って来た                瑠璃子
     善人の椅子に涙の跡がある                  喜明
                                  

楽々川柳

   『呼名』について

    『呼名の時、声が小さいと言われます。自分ではそんなに小さな声では
   ないと思うのですが、呼名にもコツがありますか?もし、ありましたら教え
   て下さい』と、匿名希望さんからご質問を頂きました。

    『呼名』というのは、川柳の大会や句会の時、入選句が発表されて、そ
   の句の作者が自分の名前を名乗る、という川柳の会での取決めの事で
   す。大きな大会の大きな会場でも作者は会場の席に座っていて、その席
   から自分です、と名乗るのです。
    句会では、この名乗りを聞いて、作者が分かるという仕組みなので、声
   が聞き取れないと会の進行が中断したりします。

    選者、また、脇取り(名前を聞いて、名前をくり返して作者を確認する係)
   に、私が作者です、と伝える作業です。
    ですから、大声でなくても、普通の声で良いのです、ただ、コツは、顔を
   上げて、選者と脇取りの係の人の方を向いて、名前を名乗ること。これが
   コツと言えます。つい、照れくさかったり、恥ずかしかったりして下を向いて
   呼名したり、横を向いて呼名したりしがちです。
    声は空気の伝導だそうです。声の大きさではなく、顔を上げる、向ける、
   という事だけで随分違うそうです。

    かくゆう私も最初の頃は何か気恥ずかしくて、つい下を向いたりしていた
   ように思います。…今は(入った~!)と、嬉しくて身を乗り出して呼名して
   いますが(^_^;)

    声が小さい、と言われる方は、一度試してみてください。

    

選者の一句

    毒舌をスリップさせる乳母車               夏牛


   
    ☆6月のお題は『布団』             5月末日締切りです。
    ☆7月のお題は『運ぶ』             6月末日締切りです。


    ☆なお『自由吟』は随時、募集しています。



  今回の特選句まな板の鯉は鳴き声など出さぬ

    『まな板の上の鯉』というフレーズは、川柳ではちょくちょく使われやす
   いフレーズです。
    しかし、『鳴き声など出さぬ』と結ばれているのには、『おお!』と、思い
   ました。
    想像すると怖い光景ですが(^_^;)、意味する事は『どうにでもしてく
   れ!』という覚悟を現しています。この句はさらに、『鳴き声は出さぬ』と、
   強められているのです。
    『煮るなり焼くなり好きにしてくれ!』と目を閉じているのではなく、悲鳴
   など上げるもんか!と言っているみたい。

    でも、作者の方は『覚悟を決めろ!覚悟を決めたら泣き言を言わずに
   頑張れ!』とエールをおくられているのかも知れません。
    力強い句で、インパクトのある一句だと思います。

2014/05/14(水) 第307回4月19日放送

特選句 

     発つべこの鳴きに心が押し潰れ              なごみ

入選句

題『鳴く』
     山寺に昼鳴く虫と別れゆく                  翔空
     眠れぬ夜 犬の遠吠え救急車                有子
     鳥鳴かぬ まだ夜なのか雨なのか             朝子
     鳴くことも出来ぬ托卵 時鳥                 喜明
     毎日が今の世の中雷鳴で                  清香
     ゴミの日は鴉鳴き声場所選び                 栄


題『自由吟』
     我ながら母に似てるとふと思う                佐知
     朝ドラの同じ場面で泣く夫婦                 英樹
     皿割ってわたし悔いなど残さない             かほる
                            


川柳ヒストリー

     燗壜に用なく春を母子きり          松本華子

    昭和15年(1940年)の川柳をご紹介します。
    昭和15年は日中戦争が3年経過して講和への道の見通しは立たず、
   昭和14年9月、ドイツがポーランドへ侵攻、フランスに勝ち、昭和15年
   9月、日独伊三国同盟が結ばれ、戦争への国民の士気を高めようと成
   されていた時代でした。

    『夫が(召集令状によって)召集され、晩酌の酒の燗をする事が無くな
   った。この春は私と子供たちだけで過ごしています』

    当時、高砂町(現、高砂市)在住の松本華子の句です。松本華子は
   「ふあうすと川柳社」に所属、「ふあうすと」の三女流と言われた一人で、
   第一回ふあうすと賞の受賞者です。
    時代が戦争で湧く中、華子の句は『自分の思い母子きり』との意思を
   詠っています。川柳は心の句、思いの句を作ることが大事、とされてい
   ます。

   松本華子の句をもう少しご紹介します。

    征く人と城の夕陽をふり返り
    軍事便来ぬ月もあり子が育つ
    軍事便ふところにして庭を掃く
    娘には娘の想いのあらむ初霰

 
          

選者の一句

    実感はないまま地動説を生き             正明

 

    ☆5月のお題は『部屋』           4月末日締切りです。
    ☆6月のお題は『布団』           5月末日締切りです。

    ☆なお『自由吟』は随時、募集しています。



   今回の特選句『発つべこの鳴きに心が押し潰れ』

    『べこ』とは、ご存知と思いますが、牛の事です。
    私はテレビなどでしか知りませんが、売られていく牛が、荷台に上
   がる事を嫌がって鳴くのです。何時もとは違うという事を察知してい
   るのです。飼い主の方にとっても何度経験しても慣れるという事のな
   い瞬間なのでしょう。

    『心が押し潰れ』るのです。

    『押し潰れ』という表現が秀逸だと思います。

    悲しい、とか、辛い、とか、切ない、とかではなく、『押し潰れ』とされ
   た事に深い痛みが伝わる気がしました。
    お仕事、と割り切れない、でも、動物の飼育を生業にされている方
   は無類の動物好きと聞きます。

    瞼にも耳にも届くような一句だと思いました。

2014/05/01(木) 第306回4月12日放送

特選句 

     鳥が鳴き大地が動く春が来た                 寿

入選句

題『 鳴く 』

     春一番呼び込み狂い鳴く鴉                 としや
     人居ない古墳でそっとホーホケキョ            瑠璃子
     ダイエットすると鳴き出す腹の虫               めぐ
     雄鳥は鳴いてなんぼの恋路知る               恭子
     母を呼ぶ子猫の声に痛む胸                 佐知
     鐘が鳴り二人は凛と聞いている               清香
 
                                              
題『自由吟』

     金づるを求め近づく傍観者                  翔空
     鈍い手を介護の笑みが勇気づけ             なごみ
     嘘らしい本音 頭をかきながら                重子

                      

江戸川柳

    使者はまづ馬からおりて鼻をかみ

    春になると最近では、黄砂、花粉症、PM.2.5など気を遣いますが、江
   戸時代は?と調べて、少し内容は異なりますが楽しい句を見つけました
   ので、ご紹介します。

    『使者』は武士の事でしょう。馬が最も便利な交通方法。しかし、現在の
   ように舗装された道路ではありませんから、馬で、ゆっくり歩いても砂埃が
   立ちます。黄砂の春でなくても、一年中、埃で衣服や顔が汚れます。
    使者は訪問した屋敷の前で、まず鼻をかんで、衣服の埃を払って、身綺
   麗な姿を確かめてから、お伺いの言葉を、という事になります。

    この江戸川柳が評価されているのは、使者の姿をよく観察されている点
   でしょう。鼻をかむ時は人前で堂々とするのではなく馬の陰などでかむか
   ら句になったのでしょう。ただ日常を写すだけではなく、観察し、クスリ、と
   笑えるところが川柳の醍醐味です。


選者の一句

    春らんまん いのちの賛歌風の彩            ヨシヱ
   



    ☆5月のお題は『部屋』         4月末日締切りです。
    ☆6月のお題は『布団』         5月末日締切りです。                          

    ☆なお『自由吟』は随時、募集しています。



   今回の特選句『鳥が鳴き大地が動く春が来た』

    大きな句だなあ、というのがとても印象的でした。
    主題は『春が来た』という喜びでしょう。思わぬ大雪が降ったり、緩んだ
   かと思うとまた寒くて、春の訪れを感じる事は嬉しかったです。
    小鳥たちの声が軽く響いて、『大地が動く』とは、花が咲き、川が流れ、
   草木が茂る様でしょうか。春が来た!!!目の前がパアーッと広がる気
   がしました。
    私の印象で申し訳ないですが、小鳥の囀りの心地よさ、そして、『大地
   が動く』広がり、『春が来た』と続くのが素敵でした。