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2014/02/12(水) 第297回2月8日放送

特選句 

     貴方の背危険な匂いだから好き            有子

入選句

題『 匂い 』

    朝市の匂い旅情を掻き立てる                朝子
    古箪笥亡母の匂いが詰めてある             なごみ
    母の手は魔法の匂い持っている                寿
    にんにくをうっかり食べた歯医者の日          瑠璃子
    ほっとする心美人のいい匂い                 益弘
    畳屋が藺草の匂い連れて来る                敏晴
                                              
題『自由吟』

    美しく狂うこの世に恋がある                  喜明
    握手した後にも残るすきま風                  良種
    何度目の冬か小さな二人鍋                 ひろこ

                      

江戸川柳

    まな板をたばこの時にけずらせる

    明和5年(1768年)柳多留3篇の川柳です。
    今でいうリフォームの仕事に来ている大工さんの、休憩中煙草を吸
   っている時、『凹んだ俎板を削って平らにして貰えないかしら』と奥さん
   が頼んでいる、というやり取りを詠んだ川柳です。きっと、この頃、どこ
   にでもある風景だったのでしょう。
    江戸時代も仕事の合間にはキチンと休憩の時間が設けられていて、
   煙草を喫い、お茶を飲んで一服しました。その休憩が終わったら一寸
   この俎板も削って貰えない?という会話があったのでしょう。

    江戸時代、『煙草を喫う事を禁ずる』という禁令が度々布かれ、見つ
   かったら売主も買った者も家財を取り上げる、煙草はどこで喫ってもい
   けない、といった厳しいものでした。今でいうと麻薬取締り、それ以上
   の罪に問われたそうです。
    栽培も禁じられ、隠れて栽培した場合、栽培した土地の代官は罰金
   を支払わなければならなかったそうです。

    しかし、この川柳が作られた頃には禁令もすっかり解かれ、煙草の葉
   や煙管は持参しなくても先方で揃えてあって、それを喫う時代だったよ
   うです。
    もしかしたら、接待の煙草だったから俎板を削ったのかも知れません。


選者の一句

    血の絆愛しく脆く 波を打つ            ヨシヱ

   

    ☆3月のお題は『魚』           2月末日締切りです。
    ☆4月のお題は『鳴く』          3月末日締切りです。                          

    ☆なお『自由吟』は随時、募集しています。



   今回の特選句『貴方の背危険な匂いだから好き』

    『やっぱり危険な香りのする男の人はモテるんでしょうな』などと正明
   さんが言われたのでスタジオは爆笑でした。
    あなたの背中(後姿)、危険な匂いがする…。
    悪い(冷たい?)男だと分かっていても惹かれる…っていう事はよくあ
   る事なのでしょうね。危険な匂い、では、もっと危ない、危うい、という感
   じが強まりますね。
    『匂い』というお題で、この川柳は異彩を放っていました。
    
    ちょっと、くすぐる、面白い川柳だと思います。