▼ 2014/02/12(水) 第297回2月8日放送
■入選句
題『 匂い 』朝市の匂い旅情を掻き立てる 朝子
古箪笥亡母の匂いが詰めてある なごみ
母の手は魔法の匂い持っている 寿
にんにくをうっかり食べた歯医者の日 瑠璃子
ほっとする心美人のいい匂い 益弘
畳屋が藺草の匂い連れて来る 敏晴
題『自由吟』
美しく狂うこの世に恋がある 喜明
握手した後にも残るすきま風 良種
何度目の冬か小さな二人鍋 ひろこ
■江戸川柳
まな板をたばこの時にけずらせる明和5年(1768年)柳多留3篇の川柳です。
今でいうリフォームの仕事に来ている大工さんの、休憩中煙草を吸
っている時、『凹んだ俎板を削って平らにして貰えないかしら』と奥さん
が頼んでいる、というやり取りを詠んだ川柳です。きっと、この頃、どこ
にでもある風景だったのでしょう。
江戸時代も仕事の合間にはキチンと休憩の時間が設けられていて、
煙草を喫い、お茶を飲んで一服しました。その休憩が終わったら一寸
この俎板も削って貰えない?という会話があったのでしょう。
江戸時代、『煙草を喫う事を禁ずる』という禁令が度々布かれ、見つ
かったら売主も買った者も家財を取り上げる、煙草はどこで喫ってもい
けない、といった厳しいものでした。今でいうと麻薬取締り、それ以上
の罪に問われたそうです。
栽培も禁じられ、隠れて栽培した場合、栽培した土地の代官は罰金
を支払わなければならなかったそうです。
しかし、この川柳が作られた頃には禁令もすっかり解かれ、煙草の葉
や煙管は持参しなくても先方で揃えてあって、それを喫う時代だったよ
うです。
もしかしたら、接待の煙草だったから俎板を削ったのかも知れません。
■選者の一句
血の絆愛しく脆く 波を打つ ヨシヱ☆3月のお題は『魚』 2月末日締切りです。
☆4月のお題は『鳴く』 3月末日締切りです。
☆なお『自由吟』は随時、募集しています。
今回の特選句『貴方の背危険な匂いだから好き』
『やっぱり危険な香りのする男の人はモテるんでしょうな』などと正明
さんが言われたのでスタジオは爆笑でした。
あなたの背中(後姿)、危険な匂いがする…。
悪い(冷たい?)男だと分かっていても惹かれる…っていう事はよくあ
る事なのでしょうね。危険な匂い、では、もっと危ない、危うい、という感
じが強まりますね。
『匂い』というお題で、この川柳は異彩を放っていました。
ちょっと、くすぐる、面白い川柳だと思います。