▼ 2014/04/04(金) 第303回3月22日放送
■入選句
題『匂い』魚捌く妻の手先にある殺気 英樹
半身ずつ分けて満足 老いの皿 なごみ
軽く見て雑魚にもあった太い骨 かほる
話すたび逃げた魚が肥大する 海童
魚好き猫もあきれる食べっぷり めぐ
キリストのようなかたちの一夜干し おーちゃん
題『自由吟』
春はそこ梅の蕾とお出かけよ 瑠璃子
貼り換えた障子が怯える孫の指 敏晴
手作りの帽子キラリと自己主張 恭子
■川柳ヒストリー
妻と母終えて女の夢ひろげ みぎわ はな今回ご紹介する句は、現在も活躍中の女流川柳作家 みぎわはな
さんの句です。
『妻と母終えて』とあります。そして、『女の夢ひろげ』と。色々とあっ
た。凹んでなんかいられない。その年齢の女性の活躍を高らかに詠み
上げています。
数年前に発表された句ですが、はなさんは昨年11月、川柳句集『雪
月花/新葉館』を出版されています。約900句が収められています。
書家としても活躍され、1987年、シンガポールの日本人基地公園の
門標の手本を書いたり、九谷焼の陶芸家と二人展を開かれました。
川柳を始められたのは平成10年です。転勤族で、ホトトギス俳句の
句会、九年母の俳句の会などに参加、句作りの愉しさを学ばれたのち
県文化人交流会で『ふあうすと川柳社』同人と同席した事が川柳との
出会いだったそうです。
現在、『ふあうすと川柳社』同人です。
■選者の一句
光線のいたずら大きな影が出来 正明☆4月のお題は『鳴く』 3月末日締切りです。
☆5月のお題は『部屋』 4月末日締切りです。
☆なお『自由吟』は随時、募集しています。
今回の特選句『滝登る鮎に拍手の応援歌』
流れ落ちる滝を跳ね上がるように登って行く鮎。
鮎は、稚魚期を海で過ごし、初春に川を遡って急流に住む魚ですが、
遡上の様子はテレビでしか見た事がありません。
もし、目の当たりに観たら『おお~!』と声が出て、その姿に驚き、思
わず拍手してしまうんじゃないかと思います。
滝を登る様子は見た事がありませんが、急流を反対に、流れに逆らっ
て泳ぐ様子は見た事があります。『すごい!』と、その時でさえ思いまし
た。
この句は、その様子を詠っているだけでは無いのでしょう。
何時の時代も若い人にとって生きにくいのが社会なのかも。そんな時
代の流れに逆らい、遡上する鮎のごとく、現代の若い人への応援歌とも
思えます。