▼ 2013/07/31(水) 第269回7月27日放送
■入選句
題『スイスイ』とんぼ追う祖父が一番楽しそう もみ
お祈りをすればスイスイ行くような 清香
スイスイとゆかぬこの世に飽きている 喜明
こだわりを解いてすいすい世を渡る なごみ
スイスイと越えた坂にも母の愛 はるママ
助けられスイスイ楽し人生路 めぐ
スイスイと行けた訳ではない轍 おーちゃん
題『自由吟』
ロボットを機械と甘くみた迂闊 千恵子
夢ばかり吐いてきれいな作業服 重子
■川柳ヒストリー
国論が揃うあやうさ菜種梅雨 時枝京子『現代女流川柳鑑賞事典』田口麦彦編 平成18年 三省堂出版の一句です。
作者は昭和5年生まれの時枝京子です。以下作者からのメッセージです。
「日の丸・君が代の強制から愛国心の評価、次には憲法改悪・天皇元首・
徴兵制へ、??疑問符が2つあります。
神風が吹くと信じた軍国少女の前歴を持つ私には『いつか来た道』への、
きな臭い匂いが鮮明によみがえって来る。
『日本を戦争をする国へ』の声が、国会では多数でも、主権者の国民多数
が望んでいるとは到底信じられない。
楽観も悲観もせず『九条を守る』草の根の一本としての想いを形にして行き
たい」
「戦後60年に発行された句集に収められた句として意義がある。60年という
歳月を経過してなお、日本が歩んだ不幸な歴史を繰り返さないと言えるのか。
ひとりの女性として声を上げたのである。作者の年代は戦争の惨禍をいやと
いうほど目にしているに違いない。
『菜種梅雨』とは『菜の花の盛りの頃に降る春の長雨』いわば、本格的な梅
雨入りの前ぶれとして降る雨であり、これをかつて戦争へと向かった直前の
様相に喩えている。」 編者・麦彦の鑑賞文抜粋
庶民の時代を超越した変わらぬ心の句と思います。
■選者の一句
両方に落度と言えぬ第三者 正明☆9月のお題は『池』 8月末日締切りです。
☆なお『自由吟』は随時、募集しています。
今回の特選句『待たされた受話器の陰に孫の声』
何とも微笑ましい光景が浮かぶ可愛らしい句です。
「ちょっと待ってね…」と、電話の主。その傍から「出る~!」「ボクも~!」
などと声がするのでしょうか。
でも、たいてい電話を変ると小さなお孫さんは何にも話さないのですよね!
ただ、話さなくても息遣いは聞こえる。お孫さんの姿が見える…。
本当に可愛らしい、優しい一句と思いました!